中年の危機

当初「剣道、やってみたいかも!」と思ってから実際始めるまで、数週間にわたり悩みまくった。

軽い気持ちで始めてすぐやめるぐらいなら始めたくなかったし、そもそも体力と気力がついていけるか、なにかと慌ただしい毎日をさらに忙しくして自爆しないか不安だった。

悩んで悩みまくって、それでも思いきって剣道を始めたのは、40歳を超えて自分の「死」を意識し始めたからだと思う。

Midlife crisis(中年の危機)。この言葉がここ最近脳裏に焼きついて離れない。

新聞を読んでも、ネットでニュースを網羅しても、このところ理不尽な怒りをばらまいたとしか思えない凄惨な事件が絶えない。そしてその多くの場合、加害者が40代前半——すなわち、私とおなじ「中年の危機」に直面している世代なのだから、やりきれない気持ちでいっぱいになる。

そうなってしまう危機を私も内包している。そしてそういった個々のわだかまりを救いきれない不寛容な社会がある。私もいつ不慮の事故に巻き込まれるかもわからない。

だから私なりに悩んで出した答えは、「いつでも死ねるように準備をすること」。

自分の生き方に責任を持ち、いつ死んでもいいように心の準備をしておく。逆に言えば、今ある命をありがたく思い、悔いのないように正直に生きていくことへの決意だ。

なぜ「いつでも死ねる覚悟を決める」から「剣道を始める」に飛躍したのか。子どもの付き添いで令和元年度の全日本少年少女武道(剣道)錬成大会に参加した時に受けた衝撃が、たぶん原点だった。

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日本武道館を埋め尽くす少年少女剣士の姿に圧倒された。これだけ多くの子どもたちが日々一生懸命練習に励んで鎬を削っている。いままで考えてもみなかったことだった。

きゅうくつな日本社会で、ふだんは子どもらしい大声も出せずに、子どもらしい悪ふざけも容認されずに縮こまっている子どもたちが、この日だけは武道館の空気をビリビリと振動させるほどの気合いに満ちた大声を放っている。すごく感動した。

感動もしたし、違和感も覚えた。

剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である

『剣道の理念』©財団法人全日本剣道連盟

剣道とは、言ってみれば元は人殺しの技。それを子どもたちが学んでいることにも違和感を覚えたし、それがなぜ「人間形成の道」なのだろう?

その時はわからなかったけれど、その逆だったのだ。人を殺すということは、自分も死ぬということ。すなわち、自分がいつ死んでもいいように、恥のない生き方をする、ということなのだと思う。

これはすべてあくまで個人的な解釈なのだけど、とにかく私は剣道のそういうところに惚れたのだ。

剣道を正しく真剣に学び

心身を錬磨して旺盛なる気力を養い

剣道の特性を通じて礼節をとうとび

信義を重んじ誠を尽して

常に自己の修養に努め

以って国家社会を愛して

広く人類の平和繁栄に

寄与せんとするものである

『剣道修錬の心構え』©財団法人全日本剣道連盟

この心構えを剣道だけでなく、自分の生き方に反映できたら素晴らしいのにと思う。

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投稿者: 山田ちとら

日英バイリンガルライター。主に自然科学系の記事を執筆するかたわら、幅広いテーマの取材とインタビューにも挑戦している。人生の折り返し地点を過ぎてから剣道の魅力にハマり、子どもと一緒に道場へ通う日々。

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